別の世界にいるあなたへーわがままな私の一つのお願い

あなたがこの世を去って今年で30年になる。30年も経っているのに、ひとときもあなたのことを忘れないのは、あなたが特別な存在だからだろう。みんなにとって。毎年墓参りに来ている奴もいるでしょ。

ぼくがあなたに初めて会ったのは6歳のとき、幼稚園の年長の冬休み明けで、もうすぐ卒園するというときだったね。初めて会ったときの印象を覚えているかな?覚えていないよね(笑)そのときの映像は今でもうっすら思い浮かぶけど、そのときどう思ったのかまでは、ぼくも覚えていない。

よく話すようになったのは小学校に上がってからだったかな。クラスは同じで、席が隣りになったこともあったね。「好きな人いる?誰が好きなの?」って聞いたことがあるんだけど、何て答えてたか覚えてる?「光GENJIの諸星君」っていつも言ってたよ。「クラスに」とか「学校に」って聞いてもね。本当は誰だったの?(笑)

彼女は、まるで屋敷のような大きな家に住んでいた。敷地には森があり、私たちはそこを探検したりして遊んだ。家に戻ると、彼女のお母さんが飲み物を出してくれて、飲みながら一緒にドラえもんの絵を描いたりして遊んだ。

43歳になった今でも、私は非常に後悔していることがある。あれは小学校2年生の3学期だった。東京では珍しく、雪遊びができるほど雪が降った。彼女は、うちに遊びに来ないかと誘ってくれたのだが、私は断ってしまったのだった。その日の朝、私は母親から、今日は寄り道しないで帰ってくるように言われていた。当時住んでいた社宅の近所の人たちと雪遊びをするから、早く帰って来なさいということだった。親の言うことを聞くようなお利口さんではなかった私だが、なぜその日に限って、私はお利口さんだったのだろう。逆に、うちに遊びに来たらと誘えばよかったのだが、残念ながら、私はそんな機転のきく子供ではなかった。

小学校3年生の2学期に、私は転校することになった。当時住んでいた社宅が老朽化のため、建て替えられることになったからだ。

確かあなたは、工作用紙で迷路を作ってくれた気がする。ぼくは確か、ボールペンを渡した気がする。今も使ってくれているかな?

最後に会ったのは小学校5年生のときだったね。学芸会のときだよね。あなたは女海賊の役をやっていたよね。内心、似合うなあと思っていたよ(笑)劇が始まる前、ぼくを見つけるや否や、「オッス!」って声をかけてくれたね。緊張している様子は全くなかったけど、緊張しないタイプなのかな?それともすでに、役になりきっていたのかな?(笑)

劇が終わった後、ぼくのところに駆け寄って来てくれたね。そして、それが最後の会話となってしまった。何を話したか覚えてる?そこで何を話したのか、ぼくは全く覚えていない。まさか、最後になるなんて夢にも思わなかったから。

いつも元気で、活発で、明るいあなたは、病気とは無縁に思える。でも中学1年の夏、あなたはぼくたちの手の届かないほど遠くへ旅立ってしまった。

ぼくは今でも、あなたが遠い世界に行ってしまったことが信じられない。信じたくもない。でもあれ以来、あなたに会えていないから、たぶん、事実なんだろうね。

そっちの世界はどうかな?もうとっくに慣れたよね。30年もいるんだから(笑)ぼくもいつかはそっちに行くことになるだろうよ。まずはそっちに行けるように、日頃の行いを良くしておくよ。でも、しばらくそっちには行けないな。こっちでやることが山ほどあるからさ。

そっちで会えたら、2年生のときにできなかった雪遊びができたらいいな。かまくらを作って、鍋を囲んで一杯どうかな?お互い、成人しているし、お酒を飲んでも問題ないよね(笑)

そのときは積もる話を聞かせてくれよ。楽しみにしてるぜ。

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